<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><rss version="2.0" xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"><channel><title>jirox Essays</title><description>日記とエッセイ</description><link>https://blog.jirox.net/</link><item><title>ベルトの穴</title><link>https://blog.jirox.net/essay/QlLAzNLyyqk9WbgAgcWQ/</link><guid isPermaLink="true">https://blog.jirox.net/essay/QlLAzNLyyqk9WbgAgcWQ/</guid><description>数日前、葬儀の準備のためにAOKIへ行った。 大人になってから、きちんと喪服を着て葬儀に出るのは初めてだった。自分もいい年齢になったので、それなりの服装が求められるだろうということはわかる。けれど、知っているのは喪服が必要だということくらいだった。 裾はシングルなのかダブルなのか</description><pubDate>Sat, 09 May 2026 00:00:00 GMT</pubDate><content:encoded>&lt;p&gt;数日前、葬儀の準備のためにAOKIへ行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;大人になってから、きちんと喪服を着て葬儀に出るのは初めてだった。自分もいい年齢になったので、それなりの服装が求められるだろうということはわかる。けれど、知っているのは喪服が必要だということくらいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;裾はシングルなのかダブルなのか。ベストは必要なのか。靴は黒ければいいのか。黒いネクタイは持っているが、少し柄が入っていてもいいのか。帛紗、数珠、香典袋。実際になにをどう揃えればいいのかはわからなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう言うことも店に行けば教えてもらえるだろうと思ってAOKIに訪れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;実際、店員さんは一つずつ丁寧に教えてくれた。安い買い物ではなかった。全部で8万円を超えた。それでも、必要なものと知識をまとめて手に入れることができたので、かなり満足していた。おかげで葬儀も無事に終えることができた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ただ、一点だけ問題があった。ベルトだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;購入時にウエストを測って、その場でベルトを切ってもらった。ところが、当日実際につけてみると、最後の一つの穴にギリギリ入るくらいで、かなりきつい。使えないことはない。でも、余裕は全くない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ここで正直迷った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;喪服周りのことを何も知らなかった自分に、店員さんはかなりよくしてくれた。その感謝がある。だから、あとから交換を申し出るのは少し悪い気がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかし、安くない金額を支払っている。しかもこのベルトは、今回一度だけ使うためのものではない。次に必要になった時、今より少しでもふくよかになっていたら、もう使えない。流石にそれは困る。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;葛藤した挙句、交換に行くことにした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;交換に行くと決めてからは、少し楽しみでもあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;安くはないものを売っているAOKIが、こういうときにどんな対応をするのかみてみたかった。嫌な対応だったら、それはそれでネタになる。そういう少し意地悪な観察者の目もあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;レシートはもう手元にはない。アプリの購入履歴はあるが、「レシートがないと無理です」といわれるかもしれない。そもそも一度使ってしまっているので、「使用済みの商品は交換できません」と言われる可能性もある。切ってしまったベルトなのだから「お客様の確認不足です」と言われてもおかしくはない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなことを考えなながら、今日、交換に行ってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;対応してくれたのは、実際に販売してくれた店員さんとは別の男性だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あの……」と声をかけた後、まずは感謝を伝えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「先日葬儀の準備で右も左も分からないところ助けていただいて、本当助かりました。無事に葬儀も終えることができました。ありがとうございました」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その上で、ベルトのことを伝えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ただ一点、ベルトを購入時に切ってもらったのですが、かなりきつくて、最後の一つの穴にしか入らないんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;店員さんは嫌な顔をしなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それは失礼しました。購入時のレシートなどはお持ちですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「レシートはないのですが、アプリの購入履歴ならあるはずです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それでも構いません」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこからの対応はとてもスムーズだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;アプリの購入履歴を確認すると、すぐに交換の手続きに進んでくれた。こちらが持ってきたベルトを細かく調べてから判断する、という感じではなかった。同じ商品を用意し、当然のようにもう一度カットする段取りに入ってくれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして、カットの話になって初めて聞かれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「前回は、どれくらい短かったですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その順番が印象に残った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ベルトが本当に短かったかを確認してから、交換するかどうかを決めたのではない。交換することを決めた上で、次に同じ失敗をしないために、どれくらい短かったのかを聞いてくれたのだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;快く交換に応じてくれる店は、他にもあるともう。けれど、ここまで気持ちよく対応してくれたのは、AOKIが初めてだったかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;AOKIの対応は、正直、想像を超えていた。ファンになった。次もAOKIで買い物をしようと思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;対応がすべて完璧だったからファンになったのではない。実際、ベルトのカットにはミスがあった。けれど、そのミスの後の対応がよかった。問題が起きなかったから信頼したのではなく、問題が起きたあとに、むしろ信頼したのだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;礼服を買ったつもりだったが、不安を扱ってくれる店を見つけた気がした。&lt;/p&gt;
</content:encoded><category>エッセイ</category></item><item><title>前の人を見れば大丈夫</title><link>https://blog.jirox.net/essay/4ArhLzhTPVp2XAyhL9ud/</link><guid isPermaLink="true">https://blog.jirox.net/essay/4ArhLzhTPVp2XAyhL9ud/</guid><description>今日は、親族の葬儀だった。 親族は二十人ほど集まっていた。 その中で私は、誰にどう声をかければいいのかわからず、ずっと半歩引いたところにいた。 理由はわかっている。 相手の顔と名前を覚えていないからだ。 この人には会ったことがあるのか。 会ったことがあるなら、なんと呼べばいいのか</description><pubDate>Fri, 08 May 2026 00:00:00 GMT</pubDate><content:encoded>&lt;p&gt;今日は、親族の葬儀だった。&lt;br /&gt;親族は二十人ほど集まっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その中で私は、誰にどう声をかければいいのかわからず、ずっと半歩引いたところにいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;理由はわかっている。&lt;br /&gt;相手の顔と名前を覚えていないからだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この人には会ったことがあるのか。&lt;br /&gt;会ったことがあるなら、なんと呼べばいいのか。&lt;br /&gt;「はじめまして」なのか、「お久しぶりです」なのか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その最初の一言を間違えるのが怖くて、結局こちらから声をかけられない。&lt;br /&gt;親族の中にいるのに、どこか親族の外側にいるような感じがした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;多分私は、人に興味を持つのが下手なのだと思う。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;会話をしていても、「その人がどう感じたか」より、「何が起きたのか」「それは正しいのか」みたいな話をしてしまう。&lt;br /&gt;人を見ているようで、出来事ばかり見ているのかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ただ、不思議なことに、名前は覚えられないのに、どうでもいいような話だけは妙に残る。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ある親戚は、これまでに何度も入院したことがあるらしい。&lt;br /&gt;それだけ聞くと心配になるのに、今日会った姿はずいぶん元気そうだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;別の親戚は、昔の地元の話をしていた。&lt;br /&gt;学生時代には、今ではあまり聞かないような荒っぽい人たちが身近にいて、校内を自転車で走り回る人がいたとか、他校の生徒がやってきたとか、そういう話をしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;名前と顔はあやふやなのに、そういう話だけは残る。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;人に興味がないというより、人の覚え方がどこか間違っているのかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなふうに、周りを見ているようで見ていない私が、焼香の前だけは父親ぶっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;娘が、焼香をどうやればいいのか心配していた。&lt;br /&gt;私は「前の人を見れば大丈夫だ。真似をするんだよ」と言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして、自分と娘が焼香する番になった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;娘も問題なくできているな、と思っていたら、終わった後で娘が言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お父さん、最後の礼、忘れたでしょ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;偉そうに教えていたのに、娘にダメ出しされてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;私は「前の人を見れば大丈夫だ」と言った。&lt;br /&gt;娘は、ちゃんと前の人を見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして私は、ちゃんと娘に見られていた。&lt;/p&gt;
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