中央公園は私の体育館だった
隣の席の経理さんたちが、ときどきお菓子をくれる。
いい年になって「お菓子食べますか?」に素直に喜んでいる自分がいる。
人間、いくつになってもチョコには弱い。
他愛もない話をしていたら、
「そういえば家どの辺なんですか?」
「XXが最寄駅なんですよね。」
「えーそうなんですか?犬の散歩で近くの中央公園よく行ってましたよ。」
中央公園。まさか会社で聞くとは思いませんでした。
スラムダンクは全盛期の頃、小学校でハマった私は、中学に入ったら絶対にバスケ部に入るつもりでした。
しかし、入学して分かりました。バスケ部がない。
ありえない。
桜木花道になるつもりで入学したのに、体育館にゴールがなかった。
いや、花道どころか、湘北高校そのものが存在しなかった。
そこで、少しでもバスケ熱を消化するために入り浸っていたのが、
バスケゴールのある中央公園でした。
中学校が終わったらバスケ友達と「じゃあ中央公園でいい?」とだけ約束します。
みんなすぐに公園に集まるので時間も決めません。
すぐに着替えて10分もかからずバスケットボールと100円だけ握りしめて中央公園に向かいます。
雨の日以外はその公園にいたと思います。
もう公園の主ですね。
「またあいついるよ」って噂されていたはず。
1時間くらい友達とバスケを楽しんだ後休憩をとり、
持ってきた100円で、公園の自販機のいちごオレを買う。
いちごオレは青春の味です。これは譲れない。
休憩が終わったらまたバスケを始める。
だいたいいつも自宅でご飯が用意される19時くらいまで遊んでいました。
ただ、冬は暗くなるのが早いんですよね。ゴールが見えなくなってしまう。
そこで役に立つのが懐中電灯です。
自転車のカゴに懐中電灯を設置。少し上を向けて固定しゴールだけを懐中電灯で照らす。
とにかく親に怒られないギリギリの時間までシュート練習に励む。
必死すぎますね。
友人も毎日バスケをし過ぎていて、靴のソールが剥がれてしまった。
「どうすんのそれ?やばいよ。」
しかし、友人は大丈夫だという。
実際、次の日には友人の靴は修復されていた。
ガムテープで。
「中央公園よく行ってましたよ。」
隣の席の人は、何気なくそう言っただけだったと思う。
でも私の頭の中では、その一言で、100円玉が鳴った。自販機のいちごオレが出てきた。
懐中電灯に照らされたバスケットゴールが、暗闇の中にぼんやり浮かんだ。
ガムテープで補修された友人の靴まで、なぜか鮮明に思い出した。
全部話したくなった。
でも、やめた。
「私も昔、その公園によく行ってましたよ」
そう言って、私は経理さんにもらったチョコを食べた。
今度、久しぶりに中央公園をのぞいてみようかと思う。
もし、ゴールを懐中電灯で照らしている子どもがいたらいちごオレを奢ってしまいそうだ。