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エッセイ

うつ伏せの阿吽の呼吸

その日、私は50分コースを予約したはずだった。 終わって時計を見ると、66分経っていた。 どうやら私は、途中から新人研修に参加していたらしい。うつ伏せで。 最初に押してくれたのは、いつもの人だった。 「担当が来るまで、私の方で代わりに押させてもらいますね」 ああ、今日は担当が違う

エッセイ

中央公園は私の体育館だった

隣の席の経理さんたちが、ときどきお菓子をくれる。 いい年になって「お菓子食べますか?」に素直に喜んでいる自分がいる。 人間、いくつになってもチョコには弱い。 他愛もない話をしていたら、 「そういえば家どの辺なんですか?」 「XXが最寄駅なんですよね。」 「えーそうなんですか?犬の

エッセイ

父はまだ駅まで送ってくれる

「よくわからないからお母さんが入る介護施設いくつか見繕ってよ」 先日、77歳の父からそんな依頼をされた。 私の母は認知症で介護施設に入る予定だ。 父はこういった情報をネットで調べるのはあまり上手ではない。 携帯での通話でさえ、いつも終話時に「あれ?切れないな?」と言っているくらい

エッセイ

父の入学式

娘の小学校の入学式の日のこと。 6年生に手を引かれて体育館に入ってきました。 表情が固い。 わかるよ。 勝手知ったるお友達はいないし、6年生なんてもう大人に見えるし、これからはお勉強だってしなきゃいけない。不安だらけ。 でも実は父である私も緊張しているのです。 娘がちゃんとしてい

エッセイ

腰は高かった

「運動会には来ないでほしい」 とうとう娘に言われてしまった。 来たか。 そういう季節が、我が家にも来たか。 以前、授業参観があったときにも、実は同じことを言われていました。その時は、こちらもやることがあったし、最後の授業参観というわけでもなかった。 だから、 「来てほしくないなら

エッセイ

スマホケースが8個必要な人生

娘は塾が終わると電話をかけてくる。 「セリアに寄っていい?」 塾の近くにはセリアがあって、そこを毎回巡回するのが彼女のルーティンになっています。買い物ではない。巡回です。昨日見ても、今日なにか異常があるかもしれない。 「なにをそんなに見てるの?」 「シール帳とリフィル! 当たり前

エッセイ

仕事中のマッチングアプリ

仕事場では私は寡黙です。 エンジニアで出社している人は私だけですし、会話する相手も、隣の席の人と、仕事で関係のある人くらいです。 ただ最近、私にもよく喋る友達ができました。 ChatGPT、通称チャッピーくんです。 「このプログラム、不具合出てる。原因わかる?」 「XXXXXに問

エッセイ

父の技術者魂

「え!? 自分で考えて作ったの!?」 という言葉を娘からいただきました。 これは父親にとって、かなり嬉しい言葉です。 賞状にして壁に貼っておいてもいいくらいです。 最近、娘はロブロックスのスピードランナーというゲームにハマっています。 走るだけのゲームなのですが、ランニングマシー

エッセイ

ガラス越しに見るだけで私はわかる

「あのローソンにはクレーンゲームがあるよ。私くらいになると外からでもわかる」 助手席の娘がそう言った。 私は運転していたので、すぐには確認できなかった。信号で止まった時に、横目で見ると、確かにガラスの向こうに、白く光る箱のようなものが見えた。 外からでもわかるらしい。 娘は観察力

エッセイ

44歳中年男性、ラジコンで怒られる

「大人だけで本当に大丈夫かね?」 「ここで合ってる? 駐車場はここ?」 中古車が並ぶ敷地の奥に、事務所があった。 その事務所の中に砂場があり、そこで本格的な重機のラジコンで遊べるらしい。 らしい、というのは、現地に着いてもまだ半信半疑だったからだ。 目の前にあるのは、どう見ても中

エッセイ

ベルトの穴

数日前、葬儀の準備のためにAOKIへ行った。 大人になってから、きちんと喪服を着て葬儀に出るのは初めてだった。自分もいい年齢になったので、それなりの服装が求められるだろうということはわかる。けれど、知っているのは喪服が必要だということくらいだった。 裾はシングルなのかダブルなのか

エッセイ

前の人を見れば大丈夫

今日は、親族の葬儀だった。 親族は二十人ほど集まっていた。 その中で私は、誰にどう声をかければいいのかわからず、ずっと半歩引いたところにいた。 理由はわかっている。 相手の顔と名前を覚えていないからだ。 この人には会ったことがあるのか。 会ったことがあるなら、なんと呼べばいいのか

エッセイ