父の入学式
娘の小学校の入学式の日のこと。
6年生に手を引かれて体育館に入ってきました。
表情が固い。
わかるよ。
勝手知ったるお友達はいないし、6年生なんてもう大人に見えるし、これからはお勉強だってしなきゃいけない。不安だらけ。
でも実は父である私も緊張しているのです。
娘がちゃんとしていられるのかを心配しているのではありません。パパ友を作らないと浮いてしまうのではないかと考えていたのです。
はい。小さいです。父の器はおちょこくらいですね。
知ってます。
ただ、人付き合いが得意でない私にとって、スタートダッシュはとても重要であることを知っています。ここで出遅れると、6年間ずっと校庭の端でスマホを見ている人になりかねません。
気合が入っています。
娘が6年生と手を繋いで入場する時に、私は隣にいた感じの良いパパさんに声をかけていました。
娘もドキドキ。
父もドキドキ。
入学式なのに、1年生たちはかなり自由奔放でした。すでに席を立ち歩き回っている子たちもいます。これはなかなか大物ぞろいです。
「結構みんなやんちゃですね」
「座ってる子も足ぶらぶらさせてますね。大丈夫なのかな」
子供達の心配をしながらも、会話を錬成していきます。
「お子さんは何か習い事しているんですか?」
「いくつかやってますね。本人がやりたいことはやらせてあげるつもりなんですよ」
「うちはやりたいことが出てこないので、バレエ・ピアノやってます。本人がやりたいと言ってくれればいいのですが」
その後も交流は続き、しょっちゅうお泊まりに行ったり来たりする仲になっています。たまに家族でご飯を食べることもあります。
そして、この間の運動会でそのパパと一緒に子供たちを眺めていました。
「もう6年生ですね。早いですね。1年生の時、体育館で話してからあっという間でしたね」
え!?
今さらっと、とても懐かしい記憶を語ってくれました!?
初めて話した時のこと覚えててくれたんですか?
「っ、懐かしいですね。体育館が最初でしたよね」
一瞬、嬉しさが顔に出てしまいそうでした。いや、出ちゃってたかも。
サブイボ立ちました。
娘は小学校に入学して、仲の良い友達を作りました。
そして父も、運動会の校庭で一人、スマホを見るだけの人にはならずに済みました。
あの日、体育館で声をかけたのは、娘のためだったのか、自分のためだったのか。
たぶん両方です。