父の技術者魂
「え!? 自分で考えて作ったの!?」
という言葉を娘からいただきました。
これは父親にとって、かなり嬉しい言葉です。
賞状にして壁に貼っておいてもいいくらいです。
最近、娘はロブロックスのスピードランナーというゲームにハマっています。
走るだけのゲームなのですが、ランニングマシーンに乗っていると経験値が貯まるらしい。
10分の勉強休憩でも、娘は目をキラキラさせて画面に食いついています。
10分しかない休憩時間に、10分ぶんきっちり楽しもうとしている。
時間の使い方としては、かなり正しい。
しかも娘は、我が家で決めたゲーム時間を妙に真面目に守っています。
私が子どもの頃なら、親が風呂に入っている間にこっそり起動することしか考えなかったと思います。
ある日、塾に行く直前に娘が、
「ギリギリまでやらせて!」
と言いました。
なるほど。
ギリギリまで走りたいのか。
しかし、そこで私の中の何かが反応してしまいました。
「塾の間、走らせておけばいいじゃん」
「でも、制限時間あるし」
「自分が触ってない時間は、ゲーム時間にカウントしなくていいよ」
「え、いいの?」
いいのです。
少なくとも我が家のローカルルールでは、本人が快楽を得ていない放置時間は、ゲーム時間に含まれません。
というわけで、娘が塾に行っている間、私の横で娘のキャラクターが延々と走ることになりました。
ところが、20分ほど経つとゲームが勝手に止まりました。
どうやら、しばらく触らないと終了してしまうようです。
たった20分。
たったこれだけなのか。
このままでは、20分しか経験値が稼げません。
一日中走らせることができない。
これはかなりの機会損失です。
仕事であれば、iPhoneミラーリングをして、スクリプトを書いて、定期的に画面を触らせれば終わりです。
しかし、それでは娘に伝わりません。
父親がパソコンの前でカタカタやって、気づいたら経験値が増えているだけです。
それは違う。
子どもには、目の前で歯車が回り、棒が上下し、何かよくわからないものがiPadをつつくところを見せたい。
そうでなければ、父親が休日にしょうもないことへ本気を出している感じが伝わらない。
そういえば、昔買ったレゴテクニックがありました。
押し入れから箱を引っ張り出し、「レゴ カム機構」で検索しました。
人生で初めて、自分のためにカム機構を作る日が来たのです。
「何作ってるの?」
ほら、来た。
娘が寄ってきました。
「例のゲームで、ずっと走らせられるように画面を押す機械」
「え!? 自分で考えて作ったの!?」
その一言で、もう完成したような気持ちになりました。
そこから2時間ほど、歯車を組み、軸を通し、棒が上下に動く仕組みを作りました。
問題は、最後に画面を押す部分です。
ここはダイソーのタッチペンに任せることにしました。
自作より既製品。
こういう最後の接点みたいなところを甘く見ると、だいたい失敗します。
ダイソーで買ってきたタッチペンを、レゴの先端に輪ゴムで固定します。
少し見た目は怪しい。
しかし、理屈の上では動くはずでした。
「いくよ!」
娘を呼び寄せ、電源を入れました。
動きませんでした。
正確に言うと、一瞬だけ動きました。
そして歯車が負けました。
タッチペンが重すぎたのです。
画面を押すどころか、途中で歯車が噛み合わなくなり、機械全体が苦しそうに止まりました。
私が無言でレゴを見つめていると、娘が言いました。
「重いからね〜。もっと軽ければいいのに!」
やさしい。
失敗した父親に、ずいぶん気を使っています。
誰がこの子に、こういう慰め方を教えたのだろうか。
少なくとも私ではない気がします。
テーブルの上には、画面を押すことも、娘を驚かせることもできなかったレゴのカム機構が、まだ鎮座しています。